【2021/1/8市会臨時会本会議】古谷靖彦市議(日本共産党・鶴見区)討論文字起こし
市第100号議案について常任委員会で否決されました。改めて本議場での可決を訴えて討論します。合わせて関連する3つの請願についても採択を訴えて、日本共産党を代表して、討論します。
今回、IRカジノの住民投票を求める市民団体は、コロナ禍の中での制約された活動など様々な困難を乗り越えて、20万筆を超える署名を集め、正式には193193筆の署名が提出されました。実に法定で必要な署名数の3倍を超える署名数でした。そして今回の臨時会が開催されることになりました。今開催されている横浜市会は、直接請求にもとづく条例制定審議のためであり、実に40年ぶりのことで、まさに市民が開かせた市民のための議会です。陳述人の陳述を直接、常任委員会とはいえ直接聞くということの大切さを私自身改めて感じましたし、その後の各会派の感想でもそのことが述べられていました。引き続き、今後の議会運営に生かしていければと思います。市長にも直接陳述人の意見を聞いていただきたかったのですが、残念ながら市長が昨日市庁舎にはいらっしゃらなかったようです。こんな歴史的なページをさらに開くのか、閉じてしまうのかは、これからの採択にかかっています。今回の署名にご協力いただいた方の中には、IRカジノ誘致に賛成の方も反対の方も協力いただきました。中には「林市長には一票を投じたけれど、嘘をつくとは思わなかった」と言いながら署名に協力いただいた方もいます。しかし残念ながら今回つけられた市長意見では、この193193筆の署名を一瞬で反故にしてしまうようなとても残念な意見がつけられていました。また、今回の法定で必要な3倍以上もの署名が集まった感想を聞いても「IRに関する市民の皆様の関心の現れ」だと軽く扱い、一言で切り捨ててしまいました。
市長。林市長には失望しました。そして怒りさえ覚えます。今回の「混乱」の原因は、ひとえに市長にあります。市長が2017年の市長選挙の際に、正々堂々と「私はIRカジノを横浜に誘致したい」と公約に掲げていれば、今日の「混乱」は恐らくなかったと思います。また人は誰でも間違いはあります。間違いに気づけば正せばいい。しかし市長はその後も間違いを正すこともなく、全く反省もない。そんな中、市民の有志がやむを得ず、今回の運動に立ち上がりられたのだと思います。
市長は先日の議会答弁の中で、市長選の際に白紙と答えた真意はとの自民党からの質問に答えて「法体系も含めて全容が明らかになっておらず慎重に検討が必要だという意味で白紙だ」と回答されました。しかしこれは本当ではないと思います。思い返せば林市長はずっとカジノ誘致に前のめりでした。IR整備推進法が成立した2014年の第一回定例議会の代表質問で「犯罪であるカジノの設置について調査費をつけるのは間違いではないか」とのわが党の質問に対し「国内外からの誘客や積極的な民間投資を呼びこむとともに、都心臨海部の再生の起爆剤ともなりうるIR統合型リゾートという手法を検討する調査費を計上いたしました。」と答弁。また「(IRは)収入を増やしていく中での大きな戦略となる。」と記者会見で語っています。その後もカジノ誘致に積極発言を繰り返していました。しかし2017年1月には突如「積極的にIRカジノ誘致に踏み込むことは考えられない」と発言し、市長選挙を前にして今までのIRカジノ積極発言を封印して「白紙」として市長選に臨み、3選を果たしました。その際に掲げた公約ではIRについて「市民の皆さま、市議会の皆さまの意見を踏まえたうえで方向性を決定」としていました。しかし、市民に一度の意見も聞かないうちに2019年8月に、横浜へのIRカジノ誘致を表明しました。これがおおよその流れです。こうやって流れを見れば、市長の選挙直前のIR誘致白紙発言は市長選挙を乗り切るためだけの方便だったと思わざるを得ません。
市長は発する言葉には責任を持っていただきたい。考えが変わることは誰しもあります。しかしその際は、なぜ変わったのかを説明するべきです。住民投票について市長は10月16日の記者会見で「住民投票がもし行われ、その結果、IR誘致が反対多数であれば、それは当然尊重したいと思います」と発言されました。重ねて10月28日にも同じ発言をされていますし、「(住民投票で反対が多かった場合)すなわち誘致を撤回するととらえてよろしいですか」との問いに「私個人としてはそうです。」と答えられています。しかし先日の議会でそのことを再度確認すると「答えを差し控える」との答弁ですし、市長意見の中では、「一つの意見だ」「住民投票を実施することで議論の棚上げだ」「住民投票を実施することの意義を見出しがたい」と完全に住民投票の役割を貶める意見しかつけられていません。考えが変わったのであれば、前はこう思っていたけど、こう変わったと考えを変えた理由を正々堂々述べるべきです。答えを差し控えている場合ではありません。市民に対しても議会に対しても不誠実です。
議会での議論も積み重ねてきたと言いましたが、カジノに関する質問を何度も質問した私には全くその実感はありません。議論が積み重なっていないからです。また市長が誘致表明をしてから一年半もたとうとしていますが、何度質問しても施設整備のためのインフラ整備にいくら必要なのか、ギャンブル依存症対策のためには、どのくらいの患者が発生して、どういう対策をとるから費用はどのくらい必要だとか、治安維持の悪化などの負のコストはただの一度も示されたことはありません。税収の見込みなどの根拠についても全く示されていません。こんな大事なポイントはいまだに隠されたままで、根拠のない、イメージの絵だけでIRカジノを理解してほしいと言われているだけです。
私はもっと議会でかみ合った論議をしたかった。市長の発言にしっかり根拠を示していただきたかった。さらにコロナ後の社会の中で、IRの収益構造はどうなっていくのか、本来の収益性が得られるのか。注目されるところです。これについて、今まで民間事業者に対して事業計画の再提案を求めていましたが、その中身についてもまた何も明らかにせず隠したままです。2019年のIRカジノ誘致宣言から一年半にわたって大事な部分については隠し続けてきたにも関わらず、議会での議論をつみかさねてきたと答弁されたことに対して強い違和感を感じます。すべては、区域整備計画で具体化していく中で明らかにすると言ってますが、つまりそれまでは、何も明らかにしないと言っているのに等しいです。市長は繰り返し丁寧に説明をしていきたいと言いました。しかし先月の常任委員会でも、実施方針案と事業者の公募に関する資料が突如、委員会開催の前日に資料提示され、すぐ翌日に議論をさせるという乱暴なやり方、これが市長の言う丁寧な議論なんでしょうか。こういうやり方は議会でのまともな審議をさせない、議会を軽視する行為です。市長の示された今回の意見はことごとく間違っています。そして丁寧に議論をしようともしていないことが分かります。
そして議員のみなさん、改めて呼びかけます。私たちみんなで議論して全会一致で成立した横浜市会の議会基本条例にもう一度立ち返っていただきたい。基本条例にはこうあります。「横浜市会が、多くの権限を有し、かつ、責任を担う大都市の議会として、市長その他の執行機関に対する監視、政策の立案、提言等、果たすべき機能を最大限に発揮し、開かれた議会としていくためには、横浜市会の伝統を重んじながら、既存の枠組みにとらわれない柔軟な姿勢を持ち、自らの改革及び機能強化に継続的に取り組んでいかなければならない。」市長に対する監視を果たすべき機能の一番目に挙げています。
昨日の常任委員会審議の中でも193193筆もの署名が集まったことは重要だと、また住民投票の意義についても誰も否定していません。私たち市会議員は、市民の声に真摯に向き合わなければならない。住民投票という形で直接的に民意を聞かない理由はありません。ぜひ横浜市議会として新しい挑戦をしていこうではありませんか。住民の直接請求による住民投票がもし実施されれば、横浜市の市政史上初のことです。皆さんとともに、横浜市会での新しい歴史をつくりたいと心から思います。住民投票は賛否両論が提示され、より説得的な意見に一票を投ずる中立的な制度です。このIRカジノ誘致の論議を議会の中だけで、粛々と手続きを進めることだけで市民理解が進むはずがありません。
この際、みなさん住民投票を思い切って実施をして、IRカジノ誘致に賛成する側も、反対する側も、しっかり市長も議員も汗をかいてそれぞれの立場で市民に向き合っていきましょう。その結果として、住民投票の結果が出されれば、それを市長も議会も尊重していく。そんなプロセスを踏んでほしい、市民の意見を聞いてほしいというのが、請求人の趣旨です。横浜市会としてそれを受け止めていただきたい。今回の市長が招いた混乱を収めるためには、住民投票が必要です。住民投票実施によって市長にとっても、住民へのIRカジノの周知が飛躍的に進むはずですし、それはカジノを推進する立場の政党の皆さんにとっても同じではないでしょうか。団体意思を決定するプロセスに直接市民が参加することは大変大事なことです。そうして得られた住民投票の結果が賛成でも反対でも、今仕組みでは結果を拘束することはできません。あくまでも尊重してほしいというものですから。そこからは再び二元代表制にゆだねられます。正々堂々議論していきましょう。
みなさん、党議拘束を乗り越えて、本議案について可決を心から訴えて、討論を終えます。